ティック・ナット・ハン著「理解のこころ」を読む 第４７回

　　　　第９章

『悟るということがないが故に、菩薩は仏の完全なる理解によって心になんらの障害もお持ちにならない。障害がないが故に恐れそのものを克服され、人間の心が生み出す幻想、錯覚からも解放され、涅槃の世界を得られたのである。
過去、現在、未来の三世におけるすべての仏は、この完全なる理解のうえに、欠けることのない、光に満ちた絶対の世界（アノクタラサンミャクサンボダイ）を得られたのである』

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心の罫礙、障害は私たちの頭が作り出す考え、概念によって生み出されるものです。
例えば生と死、汚れと清浄、増加と減少、上と下、内と外、仏陀と悪魔などです。
ひとたび不可分存在の眼をもってものごとを観れば、
こうした心の障害は消え去り、恐れはなくなり、
迷妄（幻想）から永遠に解き放たれ完全なる涅槃の世界を獲得できるでしょう。
ひとたび波が、自分はただの水である、水以外の何ものでもないということを理解すれば、
生や死のことで心悩ませることはないでしょう。
そして波はありとあらゆる恐れを超越するのです。
完全なる涅槃というのはこういう状態、
すなわち恐れのまったくない状態のことを言うのです。
あなたは解放され、
もはや生と死、汚れや清浄に振りまわされることはないでしょう。
あなたは全てから自由になるのです。

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正しくものを見ることができない私たち。・
私たちは迷妄、すなわち錯覚、幻想によって世界を間違って理解しているのです。
コンピューター用語で言えば
バイアスによって私たちはものを理解しているということです。
以前、
この錯覚と私たちの関係について
つぎのような譬えを考えたことがあります。
天動説と地動説についてです。
地球が太陽の周りを廻っていることを私たちは学校で習って知っています
これはいわば真実です。
このことは頭で理解しています。
だけど
私の日常の感覚は
太陽が東から出て西に沈むと理解しています。
これが天動説。
いくら仏教で真実を語ってくれても
私たちのふだんの感覚は
錯覚に満ちているのです。
そのtギャップ、それを
とことん問題にしたのが親鸞という人だと思うのです。
私の出来ることは
まず、本当はどうなっているのか
真実は何なのか、ということを知ることから始まるのでしょう
そして
いつの日か、
天動説という錯覚でしか生きられない私自身を知るのでしょう。