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著 書
武田智亨 プロフィール
1951年 滋賀県生まれ。
1970年 本願寺で得度を受ける。大学卒業後、教職を経て1980年 中近東、中東、中国などを1年半にわたり放浪。 現在、浄土真宗 東京・熟柿庵 庵主、彦根・西福寺 住職。 著書に『中国ひとり旅』(連合出版)、『熟柿庵だより』(東京図書出版会)。翻訳書にジェシー・マッキニー著『車椅子の上の心』、ティック・ナット・ハン著『理解のこころ』などがある。 東京・熟柿庵ホームページ リンク 逢人舎 ブログランキングへ 登録しました。 ↑ぜひ、応援クリックを お願いします。 記事ランキング
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勉強会の仲間だったMさんが急逝された。
先日の熟柿庵10周年の会にも来ていただいたのに。 ほんとに急にこの世から去っていったようで、今はなんとも言えない気持ち。 昨日、火葬場の安置所に勉強会の仲間とともに会いに行った。 とても穏やかな表情だったけれど、悲しみがこみ上げる前に引き上げた。 彼が最初に参加したのは2009年の11月。 はじめの頃は、ただ静かに聞き続けておられた。 次第に話に参加されるようになり、 そのうちに私たちのほうが彼の話に聞き入ってしまうような時もあった。 勉強会の仲間はみんなユニークな方ばかりだけど、彼のユニークさはひときわ輝いていた。 彼の博学ふりには舌を巻く。 ただ単に知識を持っているのではなく、彼なりの哲学があって それに基づいてさまざまに話が展開されていく。 いつも控えめな態度で、背中を丸め、声も小さいのだけれど、 その眼光鋭い表情と話しぶりは反論を許さないほどの毅然とした姿勢をもっておられた。 私の印象に残っていること 神田にある有名なタンゴ喫茶にお連れしたことがあった。 行く道中、彼はタンゴの事なんか何も知りません。 曲もラ・クンパルシータぐらいしか知りませんと言っておられた。 しかし、いざ喫茶店に入ると、突然 年代物の古い曲をリクエストされ、店のスタッフはあわててその曲を探し出し それから、彼はバンドネオンの歴史といつ頃から、その楽器がタンゴに採用されるように なったのかまで、滔々と話し始めた。 溢れるようなタンゴに対する知識。 なんで前もって素直にそのことを言ってくれないの? 帰りの道中で、 何故か、お芝居の話になって、新国劇の話題に及んだ。 私、「緒方拳も確か新国劇出身でしたよね。味のある素敵な俳優でしたよね」 彼、「緒方拳なんか、島田正悟や辰巳竜太郎に比べればひよこですよ」 唖然。 天台座主、慈円のこと 勉強会で、歎異抄の最後の段に来た時 法然や親鸞や多くの僧侶が流罪になったことが記されてあるところで、 Mさんは 「慈円が二人の僧侶を預かって罪を逃れさせているのですよね。」と指摘して、 慈円が天台座主になった時につくったという歌を暗記されていて 黒板に書いて披露された。 「おほけなく うき世の 民に おほふかな わがたつ杣(そま)に 墨染(すみぞめ)の袖」 この歌を説明してくれながら、声が震え、涙されながら 「この歌を武田さんに捧げたい」 とおっしゃってくださいました。 なんということ! 私は慈円のこの歌の事も知らなかったし 歎異抄の本のなかで 慈円が二人の僧侶を預かりにしていると書かれていることすら見過ごしていた。 Mさんの思い出はいっぱいある。 強烈な印象を残して鮮やかにこの世を去って行った。まだ六十代の若さで。
by jyukushian
| 2013-12-04 18:33
| WEB版 熟柿庵だより
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