ティック・ナット・ハン著「理解のこころ」を読む 第２６回

あなたが生まれた日にち、誕生日とはそもそも何なのでしょうか
誕生日以前、あなたはすでに存在していたでしょうか。
誕生日とは無から何かが生まれ出ること、発生することです。
私の質問は、あなたがうまれ出る前、あなたは無だったのか、それとも
すでに何者かとして存在していたのか、ということです。
例えば鶏が卵を産む時のことを考えて見ましょう
卵は、生まれる前すでに存在していたのでしょうか
答えはもちろんイエスです。
卵は生まれる前、鶏の体内にあったのです。
あなたもまた生まれる前、体内にいたのです。
あなたは生まれ出る前からすでに存在していたのです。
母親の胎内で。
ということは
本当の意味で誕生ということにはなりません。

誕生するとは、無からなにものかが発生することです。
あなたがすでに何者かとして存在しているのなら、どうして誕生する必要があるのでしょう。
誕生日というのは正確にいうと
（体内から対外への）継続の日なのです。
誕生日のお祝いをしたあとで、継続の日のお祝いをしていいのではないでしょうか。

このように考えると、生まれた日にいっそう素敵なイメージをもつことができるのではないでしょうか。
もし九ヶ月前、すなわち母親が受胎したそのときまでさかのぼって、
出生証明書にその日付を記せばもっとすばらしいかもしれません。
中国、そして私の国ベトナムでは
赤ん坊が生まれるとその子の歳はゼロ歳ではなく、一歳と数えられるのです。
つまり
母の子宮に受胎したそのときに、その人間の存在は始まると考えるのです。
そしてその受胎の日を出生証明書に書き込むのです。

しかしなお問題は残ります。
受胎の日以前はどうなのでしょうか
あなたは存在していたのでしょうか
「存在していた」と云えば、それは正しい答えだと思います。
受胎以前、あなたはすでに存在していたのです。
おそらく半分は父の命の中に、半分は母の命の中に。
なぜなら
無からは何も生まれないからです。
もともとは無であったあるものに名前をつけることなどできるでしょうか。
雲はどうでしょうか
雲は無から生まれたと思いますか
雲は雲になる前、たぶん川を流れていた水だったのです。
水は無ではありません。
同意していただけますか
私たちは
なにものも無からの誕生、発生を考えることはできないのです。
そこには
ただ継続があるのみなのです。


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